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細菌(Bacteria)
カプノサイトファーガ感染症
カプノサイトファーガ属菌は人や犬、猫の口の中に普通に存在する菌(常在菌)で、現在9種類が確認されてる。基本的にはこの菌は常在菌なので、人が感染したとしても、病気を発症する確率は極めて低い。しかし近年、犬、猫による咬傷や引っ掻き傷が原因で、この菌に感染してしまい、敗血症(菌が血液中で増殖している状態)を起こす例が報告されている。
(参考:カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症に関するQ and A、厚生労働省)
パスツレラ症
パスツレラ菌(Pasteurella multocida)は犬や猫の口の中や皮膚に存在する常在菌である。人は、犬、猫による咬傷や引っ掻き傷により、またはこの菌を吸入することにより感染する。多くは咬傷部位が赤く腫れて化膿するが、肺炎や敗血症を起こした例もある。
レプトスピラ症
レプトスピラ菌(Leptospira interrogans)による感染症。ドブネズミやクマネズミなどのげっ歯類の腎臓内にこの菌は存在し、尿中に排出される。人や犬(猫ではまれ)は、皮膚や粘膜を通して本菌に感染する。発熱、出血性胃腸炎、口内炎、腎障害、黄疸等複数の症状を伴う全身性疾患である。黄疸と腎障害を伴う重症例では、死亡率が20%かそれ以上になる。犬では7種以上の混合ワクチンで予防が出来る(5種以下の混合ワクチンではレプトスピラの予防は出来ない)。
(参考:レプトスピラ症、FORTH 厚生労働省検疫所)
猫ひっかき病
(Cat Scratch Disease:CSD)
名前が示す通り、人はBartonella henselae(バルトネラ ヘンセーレ、和名なし) に感染した猫に引っかかれたり、咬まれたりすることにより感染する。Afipia felis(アフィピア フェリス、和名なし) という菌も猫ひっかき病に関与するが、Bartonella henselae に比べれば、重要度は低い。近年、ノミがこれらの菌を保有していて、猫を飼育していない人から、ノミを介してこれらの菌に感染し、発症した事例が国内で報告されている。犬猫は、これの菌に感染しても多くは無症状である。人は、猫に引っかかれたり、咬まれたりすると、多くの場合、患部が腫れ、水ぶくれが出来たり、化膿したりする。また患部に近いリンパ腺(リンパ節)も腫れて、痛みを伴い、発熱、寒気、だるさがみられることもある(これらを定型的猫ひっかき病という)。心臓弁膜症を持っている人や免疫不全状態の人が、これらの菌に感染した場合、脳炎、心内膜炎、紫斑病等の重度の病気を引き起こすことがある(非定型的猫ひっかき病という)。
診断は犬猫では、血液検査でBartonella henselae に感染しているかどうか知ることが出来る(血清診断)。
予防は犬猫に触れたあとは手を洗う、猫の爪切りを定期的に行う。このほか、ノミによる媒介も指摘されていることから、ノミの定期的な駆除も大切である。
Q熱
(Query fever)
Q熱(Query fever、不明熱)という病名は、1935年オーストラリアの屠畜場の従業員の間で流行したインフルエンザとは違う、原因不明の熱性疾患に由来する。のちに、Coxiella burnetii(コクシエラ バーネティー、和名なし) という菌(正確にはリケッチア)が原因であることが突き止められた。人の方では、Q熱を診断した医師は最寄りの保健所へ届け出る義務があり、毎年、数十例が報告されているが、診断も含めQ熱は未だ不明な部分が多く、実際はもっと多くの患者(感染者)がいるものと思われる。
人への感染方法はいろいろあるが、ペットとの関連では、Q熱に感染した犬猫の排せつ物が乾燥し、細かなちりとなった状態で、吸入により感染する(経気道感染)。犬猫は、感染しても多くの場合無症状である。人では急性型と慢性型に分けられる。小児におけるQ熱は多くは急性型である。最近、慢性型のQ熱の患者で、慢性疲労症候群に似た症状(post Q fever fatigue syndrome、QSF)を示す例が見られる。
診断は、犬、猫、人の体内からCoxiella burnetii を見つけることが確実であるが、この菌は感染性の高い菌であるため、この菌を取り扱うには特殊な施設が必要であり、またこの菌を確認するのに時間がかかるため、現実的ではない。通常はQ熱を疑う症状のほかに、血液検査で、Q熱に感染している(あるいは感染していた)ときに見られるたんぱく質(抗体と言います)を調べることで診断が行われる(血清診断)。
(参考:Q熱、FORTH 厚生労働省検疫所)
コリネバクテリウム・ウルセランス症
コリネバクテリウム・ウルセランス(Corynebacterium ulcerans、ウルセランス菌)による犬・猫から人への感染症。人は、ウルセランス菌に感染した犬・猫との直接接触あるいはウルセランス菌を含んだくしゃみ・
鼻水を吸入することにより感染する(飛沫感染)国内では、ウルセランス菌に感染した猫との接触により、人が感染した例が報告されています。犬・猫での症状は風邪様の症状(くしゃみ、鼻水)や皮膚病を示す。国内での、犬・猫のウルセランス菌の感染状況(感染率)は、大規模な調査が行われていないため、不明である。
予防は犬・猫では、風邪様症状が見られたら、速やかに動物病院へ受診する。人は犬・猫に触れたあとは手洗い・うがいを行う。
(参考:コリネバクテリウム・ウルセランスに関するQ and A、厚生労働省)